日本のデザインは素晴らしいです。
私は日本のデザインは、充分世界で通用すると思っています。ですが、日本のデザインスタイルそのままでは、海外では通用しないことが多くあります。
結論を言うと、言葉も文化も違う国で日本でしか通用しないデザインスタイルが、海外で通用するわけはありません。海外で通用するデザインにする為には、やはり海外用(ユーザー)にデザインをアジャストする必要があります。
今回は、日本と海外のデザインスタイルの違いについて、ご紹介したいと思います。グローバルに活動したいデザイナーさんのヒントになれば、嬉しいです。
季節もの
日本は、ハッキリとした四季があり、季節感を感じることができます。加えて、季節毎の行事が多く、また季節毎の旬の食べ物も多くあるので、より季節を楽しむことができます。
しかし、欧米では日本ほどハッキリとした四季や、季節毎の豊かな食文化があるわけでは無いので季節感を感じにくいです。
特にオーストラリアは、季節感を感じにくいです。日本人からしたら、物足りないですね。
例えば春と言えば、日本では桜、筍、ふきのとう、入学式、入社式、新生活などが連想されますよね。
欧米では、この日本の季節感は伝わらないです。春と言えばの花は、桜では無いし、新卒一斉採用なんてありませんので、こういう日本独特の季節感の使い方はできません。
欧米で共通の季節感と行事とは
欧米で分かりやすい共通の季節ものと言ったら、イースター、ハロウィン、クリスマスです。あと、小さめの行事でバレンタインデー(日本とは逆で男性が女性をもてなす)、母の日、父の日ぐらいです。
日本はお正月が結構一大イベントとして扱われているのに対し、欧米ではお正月はクリスマスの延長で特別行事というわけではありません。クリスマスの方が家族行事として重要視されます。
従って、海外向けのデザインをする場合は、この辺りを考慮して日本ぽい季節感をデザインに取り入れるのは避けた方が良いです。
色
色には意味があることは、デザイナーさんでしたらご存知だとは思います。
これも国によっては、色の持つ意味が違います。
例えば、
デザインに使用する色選びは、ターゲットオーディエンスによっては、従来の色の意味に加えその国毎の色の意味も考える必要があります。
色の事典が一冊あると何かと便利です。私は、color index (JIM KRAUSE 著)を持っています。大分昔に発行された本ですが、今でも事あるごとに引っ張り出して、参考にしています。小さくて使いやすく、その点も気に入っています。あと、ただ眺めているだけでも楽しいです。
どうやら、日本では購入出来ないみたいですねぇ、残念。
こちらは、世界で使われている色とその名前についての本。これを読んで思ったのは、ネーミングのアイディアの参考にもなるなと思いました。あと、イラストもほんわかしていてカワイイので、ただ眺めているだけでも楽しめるし、癒し効果があるなぁって思いました。
デザインスタイル
グラフィックデザインとは、情報をビジュアルに落とし込んで、特定のターゲット層に伝える表現でビジュアルコミュニケーションとも言われています。
日本のデザインスタイル(広告、パッケージなど)は、情報をできるだけ多く入れたデザインスタイルで、まさに多くの情報を伝えるためのデザインという印象を受けます。
いっぽう欧米のデザインスタイルは、伝えたいことを端的に伝えるデザインスタイルです。シンプルですが、アート寄りでインパクトのあるデザインです。
WEBデザインを例に取ってみると、よく分かります。
ECサイト
日本のウェブデザインは、一つのページに情報が沢山入っています。特にランディングページにはこれでもかってくらい情報が入っています。
日本のWEBデザインは、ファーストビューでの情報量の多さが重視されています。「最新情報」、「イベント情報」、「オススメ」、「ランキング」などあらゆる情報が入手できるデザインになっています。
一方、欧米のウェブデザインはシンプルで分かりやすく、余計な文字情報が入っていないジュアル重視のデザインです。商品やサービス、ブランドイメージが一目で分かるように設計されたデザインです。
転職情報サイト
以下は、お仕事探しサイトデザインの日本とオーストラリアの違いです。
転職エージェント最大手、リクルートエージェントのウェブサイトです。利用者が知りたいであろうポイントや利用者の声などがランディングページに載っています。かなり情報が多いですね。
seekというオーストラリア・ニュージーランドの転職情報サイトです。サイト構成は、かなりシンプルです。ランディングページは、極限まで情報量が絞ってあり、ユーザーが迷わない為のUX重視のウェブデザインです。
こちらは、イタリア・ミラノの設計・建設・内装・インテリアデザインまで幅広く手掛ける、建設系会社です。
インパクトのある黄色をメインカラーにした、ミニマルでスタイリッシュ、そしてタイポグラフィックなウェブデザインです。デザイン雑誌を見ているような感覚にもなりますね。
タイポグラフィー
日本のテレビのテロップなどを見ていると、文字自体を結構装飾している印象を受けます。
日本のタイポグラフィーは、独特です。まず日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字があるので文字でいろいろアレンジや遊びができます。
例えば、英語はアルファベットだけです。そして、そのアルファベットの組み合わせで単語が成り立っています。日本のような、英語と日本語を組み合わせたタイポグラフィーはありません。
そういうことが出来る日本のタイポグラフィーは、独特だと言えます。
日本語のタイポグラフィーをそのまま英語に適用すると単語自体の意味が伝わりにくくなったり、見栄えが悪くなったり、そもそも日本語だからできるタイポグラフィーの場合もあります。
ちょっと具体的に見ていきましょう。
日本語では、縦書きは当たり前ですが、アルファベットの場合は、短い単語を縦書きで使うことはありますが、読みにくくなるので縦書き自体向かないです。
横書も同様、日本語のように文字をずらす場合は、長い単語は不向きです。また、波線のパスに文字を配置する時、アルファベットの場合は文字数が多い分、バランスを取る為にカーニングとトラッキングをかなり調整する必要があります。
文字の大きさを変てみると、日本語は1種類のフォントでもひらがな・カタカナ・漢字の組み合わせで視覚的に動きが生まれやすいのに対して、アルファベットは単調に見えてしまいます。
欧文タイポグラフィーの理解を深めるのに役立つ参考書をいくつかご紹介します。
このフォントのふしぎという本は、写真多めで小難しい説明は一切ありません。有名ブランドのロゴを例に分かりやすく説明されており、構えずに楽しめる内容となっています。欧文フォント・タイポグラフィー初心者、又はノンデザイナーの方にオススメです。 この筆者は、ドイツ在住の書体デザイナーです。この筆者の他の欧文タイポグラフィーに関する書籍、欧文書体―その背景と使い方 (新デザインガイド) 、欧文書体 2 定番書体と演出法 (タイポグラフィの基本BOOK) も、小難しい表現は使われておらず分かりやすく説明されていて、読みやすいです。初心者・プロデザイナーの方にもオススメです。
こちらの 新標準・欧文タイポグラフィ入門 プロのための欧文デザイン+和欧混植は、欧文書体の説明だけで無く、日本語と欧文書体の文字組みにつても解説しているので、タイポグラフィーについてより理解を深めることができます。
私は逆に欧文タイポグラフィーには慣れていますが、日本語タイポグラフィーについては全然知識がありませんでした。私が日本語タイポグラフィーを勉強する時にお世話になった本が、タイポグラフィの基本ルール ―プロに学ぶ、一生枯れない永久不滅テクニック―[デザインラボ]です。 日本語タイポグラフィーを基礎から学べるので、教科書としてオススメです。フォント選び、レイアウト、配色、そして日本語と欧文書体の文字組みも説明されており、盛り沢山の内容となっています。
全世界共通デザイン
デザインの中でも、全世界共通のものがあります。
それは、ファーストフード、ドラッグストア、スーパーマーケット、家電量販店などに使われているデザインスタイルです。
黄色と赤、目立つフォントを前面的に押し出て、速さ・安さ・品揃えの多さを表現したデザインスタイルですね。
全世界共通のデザインスタイルなので、全世界で通用するってことです。面白いし、凄いなぁって思いませんか?
グローバル展開している日本ブランド
現在、グローバル展開している日本のブランドを見てみると共通点があるなと思いました。
それは、変に日本を押し付けていないところです。
IPPUDO
外食産業で言うと、一風堂は世界的な成功を収めていますね。ここオーストラリアにも、一風堂の店舗が沢山あります。
まず、一風堂は企業ロゴが、日本用と海外用で違います。日本用は、毛筆漢字のロゴでグローバル用は、大文字アルファベット表記のロゴです。
海外にある日本食レストランの多くは、毛筆で書かれたいかにも日本的なロゴが多いです。しかし、近年はその古臭いスタイルのロゴは、だいぶ少なくなってきました。今でも海外で毛筆ロゴが使われていのは、ラーメン屋、伝統・格式を重んじる企業(団体)、あとは単純に日本と言えば毛筆と思っている企業(団体)です。
オーストラリアの一風堂は、店内は広く内装はオシャレです。オーストラリアでは、日本のように飲食店が細分化しておらず、専門店に食べに行くという文化がまだ根付いていません。ラーメンだけを食べにラーメン屋に行くというよりは、レストランに食べに行くという感覚で行きます。
従って、一風堂のメニュー構成はアラカルトやアルコールドリンクも充実しています。日本ではラーメンはファーストフード感があって、ラーメン食べたらさっさと帰るイメージですが、オーストラリアではゆっくり食事を楽しむ感じです。
各国毎の食文化に合わせたメニュー構成も、世界で成功できた要因の一つなのでしょう。
Calbee
Calbee(カルビー)もグローバル展開している企業の一つです。オーストラリアにもCalbeeはありますが、かなり日本と違います。
ポテトチップスはもちろんフレーバーは違いますし、パッケージもかなりビビットなカラーが使われていて、日本のそれとは大きく違います。
Calbeeワールドシリーズでオーストラリアで手に入るのは、中国Calbeeの商品です。
フレーバーは日本と違うものもありますが、パッケージデザインはほとんど日本と似ています。中国の方は、日本の製品を好む傾向にあると感じます。あとは同じアジア圏ということもあって、日本の製品はそのまま受け入れている感じがしますね。
パッケージデザインで言うと、オーストラリアでは、ベジタブルスナックのパッケージデザインもかな違います、ヘルシーを前面に押し出したパッケージデザイン(上記のCalbeeウェブサイト画像)になっています。HARVEST SNAPSというヘルシーラインを立ち上げて商品展開しています。
オーストラリアでは、野菜でできているスナック(ポテトチップス以外)は、ヘルシー寄りの食品という認識になります。したがって、ヘルシー食品売り場に陳列されていたりします。
日本では、基本的には原材料が野菜や果物が使われていてもスナック菓子であれば、お菓子という認識ですし、商品はお菓子売り場に陳列されています。
これはまさに、国毎による認識や感覚に合わせたブランディングの表れです。
▶︎ オーストラリアと日本の食品パッケージデザインの違いについての記事はこちら
▶︎ 【Mac/Adobe Fonts】タイムレスで使えるオススメ欧文フォントについての記事はこちら
まとめ
日本と欧米のデザインにまつわる色々な違いについて、ご紹介しました。
結構違いがあることに気づいて頂けたかと思います。
ホント、デザインって国ごとにスタイルや好みがあって面白いんですよね。私が通っていたデザイン学校は留学生も多かったので、やはり国ごとにデザインの色の選び方(メキシコ人は、原色を好む。フランス人は、淡いきれいな色を使うなど)があって面白かったです。
最初にも述べましたが、私は日本のデザインは素晴らしいと思っています。そして、日本語のあの独特なタイポグラフィーも素晴らしいと思っています。あれを自由自在に使いこなせる日本のデザイナーさん達は凄いし、羨ましいです。
ただ、日本のデザインスタイルのままでは海外ユーザーに受け入れられないので、その国のユーザーにデザインをアジャストする必要があります。
今回ご紹介した内容がヒントとして、今後の皆さんのデザイン活動のお役に立てれば嬉しいです。
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